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87%の日本人がキャラクターを好きな理由 キャラクターと日本人の奇妙な関係 (相原博之・はじめに)
日本のキャラクター市場は、周辺市場も含めると今では4兆円の巨大産業に成長しており、海外に目を向けても、ここ数年ポケモン、ガンダム、デジモンなど日本発のキャラクターが軒並みヒットしている。日本経済全体が長く停滞を続ける中、今キャラクター市場はITと並ぶ有望マーケットとして経済界からの熱い注目を浴びているのである。
確かに、街を歩けば至るところにキャラクターグッズがあふれ、子どもはもちろん、OLやビジネスマン、果てはシルバー世代までキャラクター商品を持っていない人はいないと言える状況だ。インターネットや携帯電話のコンテンツにもキャラクターはどんどん広がり、最近では近所のおばさんから「これ、うちの8歳になる娘が作ったキャラクターなんだけどバンダイで商品化してくれない?」などと持ち込みがあるほど、キャラクターはぼくらの生活にすっかり定着してしまっているのである。
そういった世の中をあらためてじっくりながめていると、さて「本当のところ日本人のどのくらいの人がキャラクター好きなんだおるか?」あるいは「こんなにも日本人がキャラクターを手放せなくなったのはどうしてなんだろう?」という素朴な疑問が湧いてくるのである。
そこで、精神科医の香山リカさんにご協力頂き、キャラクターと日本人の深層的な意識との関わりについての研究プロジェクト(?)がスタートしたのである。議論の過程でいとうせいこうさんや東大の汐見稔幸先生にも加わって頂き、さらに研究は深度を増していった。その現段階までのすべてをまとめたのがこの本である。
オフィスの自分のデスクをお気に入りのキティグッズで城壁のように飾り上げるOL、なつかしの仮面ライダーフィギュアの収集にすべてを忘れて没頭する中年サラリーマン、大好きなミッフィーのぬいぐるみにじっと見守ってもらえることで強い安心感を覚える少女... 実際に街に出てキャラクターと「暮らす」人たちの実態に克明に触れていくと、いかにキャラクターが現代人の生活と深く関わっているのかが明らかになっていったのである。
なぜぼくらは、こうもキャラクターに取り憑かれてしまったのか?
かつて社会的価値のヒエラルキーが厳然とあった時代には、キャラクター商品はただキャラクターがつけてあるだけの「価値のないもの」と考えられていた。現に社会的な評価も極めて低かったと言っていい。しかし、その後様々な既成の社会的価値が崩壊していくのと反比例する形で、キャラクター商品は急速に世の中へと浸透していく。そして、その課程でぼくらはいつのまにかその「価値のないはずのもの」のほうに強いシンパシーを感じるようになってきていくのである。
現代社会は強い「不安」に満ちている。母親は自分の子どもに「発育が遅れてないか」「他の子と比べておかしなところはないか」と常に猜疑心に満ちたまなざしを向けている。友だち同士も常にお互い「いじめ」という不安から抜け出せないでいる。夫婦関係、家族関係などすべての人間関係が大なり小なり、似たような「不安」を抱えていると言っていい。そんな中、人々は、自分を絶対的な承認の眼差し、「絶対愛」のようなもので受け入れてくれる対象を強く求めている。キャラクターは、そんな現代人の心の渇きに応えるものとして強く機能したと言っていい。
現代人たちにとって、キャラクターは「価値のないもの」であるがゆえに「ただじっとそこにいるだけの存在」として、「絶対愛」的なまなざしをこちらに向けてくれる。大袈裟に言えば、キャラクターに囲まれて暮らすことでぼくらは人間同士の社会生活では手に入れられなくなった「存在することへの承認」を初めて得ることができるのである。仕事上の関係でどんなに厭なことがあっても、席に戻れば大好きなキティたちが「私たちだけはあなたのことを愛しているわ」とやさしく見守ってくれている。それで彼女は心から安らぎを得るのである。
本来、家族や親友、恋人から得るはずの「絶対愛」をキャラクターにしか求められなくなってしまったことにある種の病理性のようなものを感じる人も多いだろう。でも、ぼくは、そういったキャラクターと人間との「恋愛関係」をあまり不自然なこととはどうも思えない。なぜなら、一度この世の中に一切キャラクターが存在しなくなったときのことを想像してみてほしい。そこに見えるのは「人間たち」だけの不快でいたたまれない風景ではないか。そこに「愛情」のようなものを感じとるのはぼくには難しいように思える。時代はそこまで来ているのである。
いずれにしても、このキャラクターと人間との奇妙な関係の中に「今」という時代の有り様がはっきりと見て取れることは間違いない。
●目次●
第1章
キャラクターと現代人の奇妙な関係
ずっと結婚しないでキティちゃんとミッフィーと暮らすの!
KAYAMA’S VOICE 子どもをキャラクター化し自己投影する母親たち
プーさんなしには子どもと会話ができないんです
KAYAMA’S VOICE 「移行対象」がないと子どもと向き合えない大人たち
こんな仕事に耐えていけるのは、かわいいたれぱんだのおかげ
KAYAMA’S VOICE キャラクターで結界を作り癒される社会人たち
キャラクターコレクションが仕事ばかりだった人生の証です
KAYAMA’S VOICE 男はヒエラルキーのある世界構築を、女は理想の私を追求する
子どもが巣立った寂しさをファービーが埋めてくれました
KAYAMA’S VOICE 自分を否定しない対象だからこそちょうどいい
MORE INFOR
キャラクターマーケットがわかるキャラクターマップ
第2章
キャラクター天国の向こう側
70年代、物語性のないキャラクター登場で日陰の少女文化が花開く!
バンダイレポート1 日本人なら誰でも「キャラクター」が好き!
キャラクター文化に火をつけた大人のお子ちゃま化現象
バンダイレポート2 あなたはキャラクターに「やすらぎ」を求めていますか?
未熟化した母親に必要なのは「いい子」キャラの子どもだった
バンダイレポート3 パパより、友だちより、キャラクターといるほうが安心!
自分のキャラクターづくりに必死になる若者たち
バンダイレポート4 キャラクターといっしょに「あの日にかえりたい」
キャラクターは主役の自分を見てくれている観客となった
バンダイレポート5 表情のない、口のないキャラ「ムヒョ」キャラブームの謎
「本当に人にあげちゃっていいの?」自他の境界線が曖昧な子どもたち
バンダイレポート6 シール交換は新しいコミュニケーションなのか
エルダー世代女性の超明るいキャラクターの利用法
バンダイレポート7 エルダー世代にとってもキャラクターはコミュニケーションツール
MORE INFOR
バンダイキャラクター研究所とは?
第3章
キャラクター開発の現場から
サンリオ
小学館プロダクション
CUBE
第4章
対談
いとうせいこう×香山リカ×バンダイキャラクター研究所
「サブキャラの時代は何を意味するのか?」
第5章
対談
汐見稔幸×香山リカ×バンダイキャラクター研究所
「子どものままでいたい親が必要とするキャラクターとは」
資料編
戦後キャラクターの流れが一目でわかるキャラクタークロニクル
ビジネスに役立つキャラクターデータ集
Vol.1 キャラクター市場推移が見えるデータ
Vol.2 キャラクター市場シェアが見えるデータ
Vol.3 キャラクターに対する意識が見えるデータ
Vol.4 エルダー世代とキャラクター
Vol.5 子どもに大人気トレーディングカードゲーム
Vol.6 子どもに関するデータ
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